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「分かりやすさ」を疑う

仲正昌樹『今こそアーレントを読み直す』第8刷オビより

情報の嵐の中で

私は気が多い性質なのか、毎日何十もの疑問を抱いては忘れていく。「明治末期あたりの人々はどんな頻度で洗濯していたのか?」「紙のスケジュール帳と電子手帳のどちらが総コストで『エコ』なのか?」など。事実に辿り着くのに時間がかかりそうな疑問は、浮かんでも、雑事に紛れて消えていってしまう。これは誰にでも日常起こっていることなのだが、IT技術革新の凄まじい勢いとともに、疑問と忘却の流れも早瀬となっていっているのではないだろうか。

かつて私が新米プログラマーだった頃、Webページのユーザビリティについて上司がこんなことを教えてくれた。

「リンククリックからページ表示まで、3秒かかるとユーザはイライラするんだよ」

多分このような記事を参照されていたのだと思う。記事によると、ページ読み込みにかかる時間の希望は「2006年の調査では4秒」だったのが、2009年の調査では半分の2秒。2017年の現代は、どうだろうか…。技術革新は、「情報にアクセスする」ための忍耐力を、かようにまで弱らせてしまった。

フランスで「仕事の連絡を絶つ権利」が認められるようになったというが、本当にいつでもどこでもネット媒体とその向こうにいる無数の人々と繋がっていて、意識して断たない限り私たちは延々とその流れに流されていってしまう。朝起きて、学校なり会社なりへ行き、帰宅し、家事雑事を済ませて寝るまでの間のわずかな時間は、スマホやヘッドラインニュースが垂れ流す様々の情報に奪われてしまい、自らわざわざ複雑な情報取得のルートを選ばなくなっている。そうして、与えられない事柄は知らないまま、昨日とさして変わらない明日がー思考停止の日常が流れていく。

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